きっと覚えてるのはおれだけ
言葉はいつでも僕を苦しめてばかり
だけど救ってくれるのもいつも言葉だったよ
誰かに笑われたって構わないのさ
君としゃべれた事実が僕にはついてるから
はじめて君としゃべった / ガガガSP
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「京都に行きたいな」
―ふーん、どっか行きたいお寺でもあるの?
「いや…、鴨川でぼーっとしてたい」
今もよく会う友達との会話。
当時はぜいたくなことを考えるなあって、笑いながらツッコミを入れてた。自分だったらせっせと予定詰め込んじゃうもん。旅行にしても、なんにしても。
そんなのに疲れているうち、世の中がこんな風になってしまった。今となっては、ただ遠くの街に行くのを想像するだけでワクワクしてしまうな。あと、何もしないで一日を過ごすのも、前ほどは恐ろしくなくなった。
いつかまた、多くの人がせっせと予定を詰め込む日が来たら、きっとどこも混むんだろうね。もちろん京都だってさ。そしたら、今度はそんなのを横目にボーッとしてたいな。それは鴨川のほとりからでもいいし、なんなら部屋からライブカメラを点けてるだけでもいいや。
なんかさ、急いでやるべきことも思いつかないんだもの。生きている中で急ぐべきことって、実はあまり無いのかもしれない。おれはここ最近の日々でそう思うんだけど、彼はずっと前から知っていたのかな?
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―遺伝子組み換え食品って、なにがダメなの?
「なにがダメか、わからないところだよ」
子どもの頃、父親からの一言。格言めいたことを言いたがるのは血筋らしい。
いま自分が恐れている物事について、おれはそれらを適切に扱えているのだろうか。
なにかを理解したうえで怖がるのと、知らないでただ怖がるのは別物であることをよく意識する。ていうか、しすぎる。
自分はどちらかというと、物事の怖い面ばかりを感じてしまう方だ。そして、世の中にはこわーい情報ばかりがあふれている。すると、何かおっかない物事についてミチミチ理解しようとして、恐れるべき対象をロジックで小さくしようとして、ただ疲れてしまう。そのうえ、自分の認知がズレていることもよくある。
でもさ、なにか恐ろしいことって、それにいちいち立ち向かうのはあんまり適切じゃないよな。
よほどのこと以外は、うまく目を反らさなきゃ。
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「おれの職場、このすぐ近くなんだよね。悪いこともできないや」
―手をつないだり?
「手をつなぐのは悪い事じゃないじゃん」
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"クロノスタシス"って知ってる?
知らないときみが言う
時計の針が止まって見える現象のことだよ
クロノスタシス / きのこ帝国