あなたの10年、どうだった?vol.3 - 後編

(前編はこちら)

matakki.hatenablog.com

 

▼6年前 音楽

 

 今話した子と別れてから、いろんな出会いとか探したんだけど、俺がこういうメンタリティだったから…。気持ち悪かっただけど、ワンナイトとかも、そんとき重ねてったんだけど。今思うと、一番よくないやり方じゃない?寂しさから行為に及ぶって。しかも、抱いてる時も気持ち悪くて、すごい相手にも失礼で罪悪感だったんだけど、エッチするたびに病む、みたいな。

 

 なんかさ、キスとかしても唇の形が違うとか、鼻が違うとか。前の人と比較して。相手にも失礼じゃん。でさ、告白とかされても、今の気持ちでは付き合いないって断ってたし…。それで、こっちの活動を全部やめたの。で、年末のCOUNTDOWN JAPANに救われた。

 

―ここで、フェスに行く機会が。

 

 音楽に現実逃避してたのもあるし、それで音楽に救われたのもあるし…、あとバスケットボールもやってたけど。フラれた直後もSummer Sonicに行ってたね…、フラれた次の日くらい。初めてね、androp観て号泣してた(笑)。あと、RADWIMPSme me she歌って号泣(笑)。

 

 あとね、人生で初めて寝れなかったんだよね。この年のお盆ってひどくて、まだ試験に受かってなくてニートしてて、もぬけの殻になってて。テレビをつけて、お風呂とかも入らないでずっと横になってて、寝れないの。それで、ようやく寝れたと思ったら、別れた彼の夢を見て…。

 

 そこで、失恋したら新しいことを始めるといいって言うじゃん。だから、偶然誘ってもらったフェスに行き始めてね。その間だけは、彼のことを忘れられた。

 

 なんだろう、人生でこんなに強く孤独を感じたことはなかったね。ひとりで福岡行ってさ、初めての土地でひとり暮らしとかするじゃん。そういうのはホームシックとかなくて、ワクワクしてたと思うんだけど、この頃は、当たり前にあったものがない感覚を味わったというか。

 

 たぶん原因は失恋なんだろうけど、しかも、自分ではたいして長い期間付き合ってもないとも思ったんだけど、すごい孤独を感じちゃって…。それが埋まらなかった。それを忘れられたのが、バスケやってる時と、フェスに行ってるときだった。

 

 普通さ、友達といたら気が紛れたりするじゃん?友達といても、我ここにあらずみたいな感じがずっと続いてた。友達に迷惑をかけちゃうなって頭もあったから、あまり会わないようにもしてた。それもあんまりよくなかったんだけど…。この頃は、本当にツラかった。

 

 でもまあ、そこで、音楽とバスケがね、蜘蛛の糸みたいな感じで、2本垂れてたって感じかな。

 

―関東に出てきたタイミングで、こういう出会いと別れがあって、立ち直る時に音楽とバスケがあって…

 

 まあ、タラレバはないけど…そういう、なんだろうな。運命って言うのはキライだけど…ご縁なんでしょうね。としか、言いようがないけどね(笑)。

 

―ご縁ってのも言いづらそうだけど(笑)

 

 だって、終わったことは変えられないからさ。後から適当に運命とかご縁とかって言うしかねえなって(笑)。

 

 

▼5年前 希望

 

―5年前は、希望と。

 

 あー、この頃はちょっとずつ回復してってさ。なんか、他にもやりこともあってさ。引きずってる最中ではあったけど、また上を向けそうだなって。あとは…、試験受かっといてよかったって(笑)。

 

―試験が受かったということは、この頃仕事は?

 

 この頃は司法修習があって。実はさっきの年は恋愛だけじゃなくて、家族が病気になったりもして、恋愛関係も家族関係もグチャグチャだったんだけど、そういうのが落ち着いてきて希望が見えてきたってところかな。

 

―司法修習というのは?

 

 えっとね、司法試験に受かるじゃん?そうしたら司法修習というのがあって、まあ簡単に言うと、まず検察官の仕事を3ヶ月見て、弁護士の仕事を3ヶ月見て、裁判官の仕事を3ヶ月見て、最後残りの3ヶ月で全体で研修をやるの。その1年が終わって試験を受けて…まあほとんど落ちないんだけど、それで初めて、弁護士登録の資格と、検察官になれる資格と、裁判官になれる資格がもらえるの。

 

―なるほど。

 

 司法修習のときはね、実際に裁判所に行って裁判官の横で広聴したりして…まあ、それ自体はロースクール時代も行ってたんだけどさ。勉強なんだけど、机の上の勉強よりも、もっと実務的なものをね。起訴状の書き方とか、起案の仕方とか。

 

 まあ簡単に言うと、お前ら試験に受かっただけだろと。実際は職としてこういうふうにやっているんだぞと。そういうことを教えてもらう…って感じなのかな。現場を見て知るって感じ。

 

―これから実務に就くぞって気分は高まりましたか?

 

 うん、目指していたものは間違っていなかったかなって思った。なんかミーハーな言い方になるけど、カッコいいな、アイツらって(笑)。

 

 ただ唯一後悔しているのが、前の年のことを引きずりすぎて、もっとちゃんと実習をやっておけばよかったなってのがある(笑)。もぬけの殻すぎて、ちょっとヤバかったんだよね。しかも、山場の試験は終わってるわけじゃん。だから、ボケーっと。本当にもったいないことをしたと思ってる。最低限のことしかやってなかった。

 

 だから、いま何を学んだか聞かれてグサッときたのが、「俺、何かをちゃんと学べたんだろうか?」って。

 

―受けたものはよかったけど、自分がもぬけの殻だったと。

 

 そうね。だから、実習を受け入れる準備を自分自身が出来てなかった。なんかね、この年は身体がふたつに分かれてる感じだった。去年を引きずってる自分と、新しいところに進んでる自分と。魂は、宙に浮いている(笑)

 

 そんな状態を継続してやってるうちに、ちょっとずつよくなってきてるって感覚があった。それが希望だったと思う。

 

 あと、何で飯食ってくかって悩みは一切なくなった。実家の家業もあるし…ちょっと整理は必要だったけど、それで自分の資格も持ってたし。とりあえず食ってける!みたいな。っていう意味の希望もあり。

 

―なるほど。じゃあ仕事は実家のことを…。

 

 いや、弁護士になった。だけど、1、2年やって実家に戻らないとキツイなって思ったから…父親が病気やってたから。ちょっとだけ弁護士をやらせてもらって…最低でも2年くらいやりたいと思ってたから。

 

 

▼4年前 死別

 

 この頃、祖母が亡くなったんだよね。自分の祖父母のなかで、一番最後でね。まあ90代まで生きたから、大往生なんだけど。

 

 おばあちゃんはね、最後、自宅で息を引き取ったんだよ。それまでのおじいちゃんもおばあちゃんも病院でね。畑で倒れてるところで見つかって、息を引き取るところを見守って、北枕に変えるのも俺が抱き上げて。最後看取れてよかったな…。

 

 おばあちゃんね、俺が九州の大学院にいるとき、飛行機で来てるからね。80代後半で。結構楽しかったって言ってた。飛行機とか。

 

―すごい!

 

 俺が小学生のとき、70歳超えてたけどスプラッシュマウンテン一緒に乗ってたからね。

 

―じゃあ、結構かかわりはあった方なんですね。

 

 田舎だからね、一緒に住んでたの。小さい頃は箱根とかも行ったな~。

 

―元気なおばあちゃんだったんですね。

 

 元気って言うか、身体は丈夫だったと思うよ。元気っていうか、品のある人だった。スプラッシュマウンテンに乗っても、「キャー」とか言わないの(笑)。

 

 妹がさ、晩年の頃に写真とか撮るんだけど、「おばあちゃんこっち向いて」とかって言うとイヤがるの。「綺麗になったとこ撮って!」って(笑)。それで、妹が彼氏を連れて行ったときは、「私がもうちょっと若かったらねえ」なんて(笑)。あと、怒らない。イヤミは言うけど(笑)。

 

 まあそういう死別があって、仕方ないなと思いつつ、ちょっと寂しさがあったね。自宅で看取れたのはよかったけどね。入院しているときも、イヤがってたらしいんだよ。家に帰りたいって。だから、最後に家に戻れたときは、ホッとしてたみたい。

 

 

▼3年前 日常

 

―ここに来て、日常と。

 

 いろいろ落ち着いてきたって言ったじゃん。引きずってきたものを乗り越えた年でもあり、コロナが次の年から流行るのもあって、俺のなかで日常に戻ったと感じられた年なんだよね。なんか、普段の俺というか、そういうのに戻ったなって感じだった。

 

 引きずってたものもなくなり…というのが、前に話した子が、俺の知り合いと付き合って音信不通にしたのも、この年だった。その子に対する思いもスーッと引いて行って。簡単に言うと、俺がこんなに気にしてあげる価値もなかったんだっていうね、かなしさもあったけど(笑)。

 

 この頃、一瞬付き合った子がいたんだよね。その子も、自然消滅っぽい感じになりそうになって。その子がアプリを再開して、恋人募集ってつけてるのを知って、「お前、そういうのよくないよ」って言ったら、「本当にごめんなさい」って返してきて。なんかそこは許しちゃったんだよ。「あっ、謝ってもらえるだけでこんなにラクになるんだ」って思って。

 

 バスケとかでいろんな人と知り合えて、つながりとかも出来たりとかさ…。面白い経歴の人がいっぱいいて。芸能人もいたりしてね。もう40歳を超えたおっさんで、バスケを40歳から始めたって人もいた。「実るほど頭が下がる稲穂かな」じゃないけどさ、すごい腰低いの。そのくせ、今はテレビに出ているような芸能人が駆け出しの頃に会ってて、「もう雲の上の存在になっちゃいましたね。アハハ」とか言ってて。やべえなこの人って(笑)。

 

 そういうね、普段会えない人と出会ったりして…ずっとそうだとは思ってたけど、その人たちも、人間じゃん。普通の人だったしね。俺も変にミーハーになったりしないから可愛がってくれたりとか、一緒にお酒飲みに行ったりもしたよ(笑)。そういう経験も積めて、結構充実した年で。

 

 仕事はねー、なんか大きい仕事はやってないけど…。仲間が結構大きい仕事で頑張ってるのを見て、刺激をもらったりしてて。こっちは交通事故の仕事しかやってないのに(笑)。

 

 なんか、いい刺激がいっぱいあって。バスケでも仕事でも。それで自分の精神的にも落ち着いてきてて。なんか、よかったなって思い出があるんだよね。この年は。うん、楽しかった。

 

 旅行とかも、東北行ったりとか。Twitterで絡んでたけど、距離が遠くて会えなかった人とか、5年くらい付き合いあるけど会ってなかった人とか…みんなうれしいんだよ。俺にために休み合わせてくれたりとか、車出してくれたりとか。

 

 俺がこっちの活動を始めた頃に痛い目にあって、ちょっと身の振り方を変えたりとか、自分の気持ちに素直になって接するようになってから、こっちの友達もいい人が俺の周りにはいてくれてるので、それがなんかありがたいなって思ってる。俺の場合、それが気づいたら日本中にいるなって。東北は4日間行ってて、1日も暇することなかった。

 

 なんだかんだ、すごいツラい思いをした頃に、結局そばに居て支えてくれたのってこっちの友達なんだよね。だからなんかね、恩返ししたいなって思うことはあるよ…そいつらが困ってたら。本当、助けられてる。

 

―この頃になってみたら、友達にも恵まれていたというか。

 

 そうね、だから落ち着いたって感じ。まあちょっとキツイ言い方をすれば、変な奴は去ってったし、俺のことを大事にしてくれてる人だけが残ってった。連絡を取れば「飲みに行こうぜ!」ってなるし、そういう関係ってありそうで、無いじゃん。自分で言うのもなんだけど、素敵なことだなって思ってるのでね、ぞんざいな扱いは出来ないな。

 

 

▼2年前 非日常

 

―一転して、非日常。

 

 そうだね、コロナのせいで…。

 

 バスケは出来なくなったし、フェスもなくなったじゃない?なんかね、気持ち悪いんだけど、本とか読み漁ってて(笑)。

 

―全然気持ち悪くないと思うけど(笑)。

 

 めっちゃ気持ち悪かったよ。「なんで、こんなわけわかんない本読んでるんだろう?」みたいな(笑)。社会学とか、哲学とかに興味持ってね。まあ、元々興味はあって読んだりはしてたんだけど、ちょっと時間あるし、じっくり読んでみようかなって。

 

―じゃあ空いた時間は、結構内に向かって使ってたと。

 

 そうそう。大学の学部でやってたのを見てみたいなとか、法律と近い分野だけど触ったことが無い分野…哲学とか、そういうのとか読んだら面白いかなって。完全に趣味。

 

―ここ数年来、バスケだったりフェスだったり、あるいは九州での仲間だったり、人と会うことが支えになっていたと思うのですが、その機会がパッと消えてしまって、何か影響とかはありましたか?

 

 それが無いんだよね。物理的に会わなくはなったけど、オンライン飲み会みたいなのをよくやってた。だから連絡はとってたので…、寂しさとかはなかった。全くと言っていいほどなかったかもしれない。

 

 あとは、こう言うと調子乗ってるって思われるかもしれないけど…、俺ニュースとか嫌いなのよ。なんか、すごい一面的だし、煽ってる感じもすごい伝わるし。「ゼロコロナ!」とかって、今言ってる人いないじゃん。

 

 よくあるけどさ、ロシア叩きとかもひどいじゃん。ロシア料理店とかロシア文学を研究してる人とかもそういう目にあって…。ロシア文学って素晴らしいんだよ?ドフトエフスキーとかいっぱいいるのに、それを否定する方向まで行くのが、すごいイヤで。絶対悪として見すぎてるかな。

 

 だから、ニュース見ないの。結局何するかって言うと、ネットで探すんだけど、そこも玉石混交だし…なんか、ぼややんとしてるの。

 

―テレビを見ないのはコロナが流行ってから?それとも…。

 

 もっと前から。俺、本当にテレビ見ない人で、ワールドカップとオリンピックのバスケ以外見てないの。

 

―徹底してらっしゃる。

 

 徹底っていうか…、見ないんじゃなくて、見たいと思わないの。YouTubeでいいし。

 

 って感じなので、意外とそういう生活だったから、あんまりね、非日常なんだけど、ツラいって感じじゃなかったよね。外に出る方が怖かったから。なんか言われそうだし。それで、やりたいことやって籠ってて、夜はオンライン飲み会して、意外と非日常を楽しんでたところはある。そんなことずっとやってたら、この年は終わってた(笑)。

 

 

▼1年前 恋

 

―そして、ここで恋というテーマに…

 

 それがね、記憶がないのよね。去年でしょ?

 

―去年です。

 

 去年…ないかな。なんで恋なんて書いたんかな?

(注:テーマは事前に考えてもらってました)

 

―ここで変えても大丈夫ですけど(笑)

 

 あ、恋したいなって思ってたんだ。いろいろ落ち着いたし、コロナもよくなってきたし、俺のメンタルも回復してきたから、そろそろちゃんと恋をしたいなって思ったのが去年。とかやってるうちに1年経ったんだけど(笑)。

 

―「恋してた」ではなく、「恋したい」の1年だったと。

 

 そう、したい(笑)。

 もう変に過去に縛られることのないくらい時間も経ったし、自分のなかで乗り越えたし…。ね、素敵な人に出会えたらなって。だから、自分磨きたいなって思ってた。

 

―いろんな人と会おうって時期もありましたけど、今回は自分を磨こうって思ったんですね。

 

 んー、なんかダイエットしようかなとか思ってたけど(笑)。

 

 あと、これは恋愛だけじゃないんだけど、自分のことをいいなって思ってくれた人が寄ってきてくれるし、俺も喋ってていいなと思う人には惹かれるからさ、会話とかしたがるじゃん。それで、ほわわ~んと行った方がいいんだろうなって。

 

 前はしゃかりきでやってたからさ。視野狭すぎよ(笑)。

 

 まあね、そういう意味で落ち着いたし、俺自身が恋をする…心構えとか?今は落ち着いてるから、ちょうどいいな~って思い始めた。

 

 

▼まとめ

 

―さて、ここまで10年間頑張って振り返ってもらいましたけど、自分のなかで変わったなって思う点は、ありますか?

 

 表面的にはいっぱい変わってると思うよ。けど、変わってないって感覚が強い。軸みたいなところはね。変わってねえなって思う、どっちかっていうと(笑)。

 

―じゃあ、過去にもどったとしても…。

 

 記憶があればね、過去と同じようなことはしないと思うけど…やっちゃうんじゃない?たぶん。おんなじことやるよ(笑)。

 

―なるほど(笑)。では、この先将来のことを考えたら、どんなふうにありたいですか?

 

 幸せになっていればいいかな。

 

 好きな人と一緒にいてさ、幸せだなと思えればいいんじゃない?生活もできて、仕事も出来てさ、好きなこともちょこちょこは出来て…、まあそれがすべて贅沢だけどさ。やっぱり、幸せにならないとダメだよって思ってる。

 

 まあ、その形はいろいろあると思うけどね。仲間とか…、友達でもいいし、恋人でもいいし、パートナーでもなんでもいいんだけど、俺が本当にそういう風に思える人と、生きていけるとしたら、それが幸せかなって思ってる。