パラダイムシフト
おれは今、むかし見た夢の中を生きている。
ずっと前、自分はきっと若くして死んじゃうんだろうなって思ってた。何もかもに絶望して。
当時はブラック企業なんて言葉が出始めた頃で、社会で働くことが到底自分に出来ると思えなかったのだ。そうでなくても、人付き合いとか自分の外見のこととかで自信が持てなくて、あれこれ悩んでいた頃だった。
だから、日々特別なことがなくてもいいから、穏やかにある程度好きなことをして過ごしたいなって思ってた。きっと悩むこともないだろうし、平穏な生活が自分にとっての百点満点なんだろうなって。それでいて、そんな日々は来ないんだろうなとも思いながら。
そして今、自分は当時望んでいたような生活を送っている。
自分の好きなものに囲まれた部屋で、好きなことをして過ごしている。たまに寝不足になりながら。
仕事で深く悩むことも無くなった。どうにもならないことも、それはそれとして納得できるようになった。時々疲れることはあるけど、上手くやり抜いたり失敗したりしながら、なんとか笑いどころを見つけて過ごしている。
仲がいい人と遊ぶこともあるし、ひとりで過ごす時間も楽しい。懐かしむ思い出も出来たし、これからやりたいこともたくさんある。それを紙に書き出せと言われたら、少しまとまった時間が欲しくなる。
そう、何もかもに満足しているわけじゃない。あの頃は思いもよらなかったようないろいろな欲求が、自分を悩ませたり奮い立たせたりしている。
けれど、いつしか得てしまった気づきが、時々自分を無力にさせる。
何を手にしたところで、おれはきっとまた足りないものを見つける。それがツラくなる瞬間が、全然減らないんだ。
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「またさん、よく毎日お弁当作れるなあ」
―台所に立っていると、何も考えなくていいもんで。
「考えたくないことがあるんだね」
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人の思考に占めるポジティブとネガティブの割合って、そんな簡単には変わらないと思うのだ。
自分がもっと満たされていた頃にしたって、どこからか不安の種を見つけてうんうん悩んでいた。逆に、客観的に見てもちょっとしんどいよな、って時期でも、案外自分なりに前向きになれる材料を見つけてぼちぼち前に進んできた。
富士の山ほどお金を貯めている人だって、日々ネガティブさに怯えながら生きているかもしれないし、全財産が富士の山の絵柄が入ったお札1枚きりな人でも、結構ニコニコ生きているんじゃないか。
なんて、改めて文章にすると少しは気がラクになるけど、きっと明日の朝にはいつも通り6:4くらいで嫌なことを多めに考えながら目覚めているのだ。
まあいいさ、ここ何日か、何も考えない日が続いたなってだけで不安だったからさ。何も考えずに不安になるなら、なにか泥みたいなことを考えて不安になる方が、まだマシだなあって思うもん。
おれに必要なのは、ほどほどに頭を回すこと。それでいて、考えすぎないことだ。何もかも忘れてラクになることじゃない。
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最近、自分が見ているSNSのタイムラインが静かになってきている気がする。
ツイッターが、フェイスブックが、インスタグラムが、衰退してきているのかなと一瞬思ったけど、そういうわけじゃない。もう、たくさんの付き合いを維持するとか、みんな通り過ぎちゃったみたい。
これから、おれたちの周りで流行るSNSは無いのかもしれない。
そうでなくても、何十人もいるような宴会に出るとか、集合写真のひとりとして写り込むとか、そんな機会もなくなってきた。オフラインでも、付き合いの薄い人と会うことって一般的には減ってくるみたいだ。
生きること自体、歳を重ねるごとに内向きになるんだね。
たくさんいた同期の仕事の愚痴は、ここ何年かで届かなくなった。
結婚式を挙げた友達は、自分達のことに忙しくしているみたい。
中高年のゲイの先輩の声を、あまり聞くことがない。
ここでいう内向きになるというのは、自分の手の届く範囲でニコニコ暮らすことに満足するということ。自分自身と身近な人で、ひっそりと笑っていられればオッケー。付き合いの薄い人に、身の上をネタにすることなんて、みんなもう別に求めてないんだろうな。そうですよね?
おれは何向きに生きていくんだろうな。
ま、少なくとも、死にはしないんだろうけど。
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このスイートマイナーコードに乗せて
幸せを当たり前にしないよ
ラッパーが涙を流すようなリリックが欲しい
スイートマイナーコードに乗せて
幸せを当たり前にしないよ
だからたまには悲しませるよ
スイートマイナーコードに乗せて
幸せじゃない未来も歌うよ
そうやってはためかせたwing and soul
スイートマイナーコードは呼ぶよ
甘すぎず苦すぎないリリック
あとはリズムを君が鳴らして
ラッパーの涙 / indigo la End