スタンドバイミー

音楽、その音楽 俺を開いて
Hi-Fi、あのHi-Fi 今を照らして

「変わらぬ日常」なんてどこにも無いよ
俺の音楽、俺の音楽 今を照らすぞ


音楽 / FoZZtone


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つくづく、音楽とはいい付き合い方が出来てるなっておもう。

おれが自発的に音楽に触れるようになったのは中学生の頃、初めてMDのウォークマンを買ってもらった時だった。テレビでサビだけ聞いたことがある曲を、自分の聞きたいときに全編聞けるのが嬉しくて、みるみるうちにいろんなCDをMDに化かしていった。チャリを飛ばして向かったちょっと遠くのツタヤ。四角くパッケージされた10枚組のMD。友達が自慢してきたけど流行らなかったHi-MD。。。

それからもう人生の半分くらい、好きな音楽を聞き続けていることになる。演奏もするようにもなった。自分がどんな状態にあっても、音楽は近くにあって、ごく自然に思い出も積みあがった。

そう、音楽とはずっと自然な形で一緒に過ごしてきた。


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一応、音楽の他にも興味を持てたことはあった。ときどき現れる新しい物事に、当時の自分なりに多くのエネルギーとか時間を割いたこともあった気がする。

けれど、その多くがどんなものだったか、今となっては思い出せない。興味を持ったもののあまり深入りするまでに至らなかったり、没頭することがあっても、それを好きでいることに誇りが持てなかったのだ。

その点、音楽は違っていた。時間とかエネルギーをいっぱい使う気になれて、そのことを自分にとって大切だと認めこともできた。

一時期は、自分が使えるリソースを全部音楽に注ぎ込んでいた。時間とか、お金とか、体力に精神力とか、、それによって自分の求めていた音楽と出会えて、プレイヤーとしての理想に少し近づき、いろんな人が自分を認め、受け入れてくれた。

こうして音楽は、自分をかたどる大きな存在になった。

(没頭するくらい好きになれたけど、他者からはあまり評価されない分野だからと言って、そそくさと封印してしまった趣味のことを思い出すことがある。自分が惹かれる物事を当然のようにやればいいのに、人目を気にしてその気持ちにフタをしてしまったのだ。そして、音楽が残った。その過程において、”好きなこと”より、”他人に評価され得る好きなこと”を選んだ要素が、自分の一側面として確かに存在することを、どうも無視することができない)


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今はつかず離れずというか、音楽について深入りすることはめっきりと減って、気が向いたら思い出すくらいの距離感にはなっている。それにしたって、気が付けばiPodに手を伸ばしているし、実際に演奏を見に行きたいミュージシャンも、自分で演奏してみたいことも、まだまだたくさん存在する。そして、音楽に夢中になるひとときを定期的に迎える。結局のところ、それほど距離をとっているわけではない。密じゃないだけ。

音楽を通して出会った人もまた、いまも付き合いが続く人ばかりだ。それぞれにいろんな思い出があるし、今となっては音楽以外の話をすることもよくある。それでも、ふと疎遠になりかけたり、暗い話題になった時は、一緒に好きになった音楽が救ってくれたりもして、おれと周りの人たちを繋ぎとめてくれている。

といっても、音楽がきっかけで出会ったけど、もう疎遠になった人もたくさんいるの事実。今もどこかで自分と同じ音楽を聴いているのかもしれないけど、あいにくセンチメンタルだけで人はつながれない。せいぜい元気にしててくれやと思う。そして、いま周りにいる人も、いつかはどこか遠くに離れてしまうのかもしれない。

まあその時が来たら、それはそれとして自分もまた新しい仲間を見つけて楽しくやっているんだろう。今までがそうだったようにね。付き合いの長さに縛られて、つまんない関係に自分を閉じ込めるなんてまっぴらごめんだ。


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時間が過ぎても、結果として長い付き合いになれた音楽がある。

人から好きな音楽について尋ねられると、自分の状態が良い時も悪い時も、ふと聞きたくなる音楽ってどれだろう?ということを考える。場面によって聞きたい音楽が移ろうのは当然なんだけど、いつでも気にかかる音楽もある。そういったものに、自分は特別な気持ちがある。

といっても、それに対する執着もまた全然ない。何年も頻繁に聞いてた曲を全然聞かなくなったり、ツマラナイなぁと思ってしまうこともある。「この曲は思い出の曲だから!」と、自分に言い聞かせて、テープが擦り切れるまで…現代風に言うと、iPodの基盤が擦れるまで?聞き続けることはない。あくまで、今その音楽を聞きたいかどうかなのだ。

長く自分のそばにあるものに対する情は、確かに存在する。それを暖かく感じることもあるし、むしろ求めているくらいだ。けれど、情にとらわれすぎると、どこにも行けなくなってしまう自分に気づく。

自分の好きな音楽はずっと素敵であって欲しいし、逆に音楽が自分を求める…って直接的にはないんだけど。リスナーとして、プレイヤーとして、周りの人が持っている音楽的な面とつながれるように、アップデートを重ねていきたいな。

…ってきれいにまとめたかったけど、本当に執着がないんだよね(笑)

好きなミュージシャンでも全曲完全に網羅していることはあまりないし、自分の演奏にしても伸びしろだらけだ。むしろ自分のダメダメな演奏を見て、「あ~あ(笑)」って頭をかくこともある。けれど、リスナーとしてもプレイヤーとしても、好きなあれこれの「ここがいいな」ってポイントは知っているし、気になったポイントはとことん追うようにしている。好きは好きだけど、気に入ってるポイントが揺らがなければ、だいたいのことは結構どうでもいいんだ。

きっとこれが、人生の半分くらいを使って見つけた、自分の音楽との付き合い方なんだろうな。


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さすらい歩く街の中
ふいに沸き上がるメロディーが好きさ

口笛を遠く響かせながら
過ぎたあの日々を想う

行こうぜベースマン
3メートル隣で鳴らす夢の続き
誰にも真似できないそのステップで

愛してるなんて まさか言わないぜ
風と共に行くだけさ


ベースマン / andymori


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ここにまとめたような捉え、

恋愛でも出来るようになりたかったんだけどね。