連休点描
連休の始まり、ベース弾きの友達がうちに来てくれた。
ふたりで缶ビールを次々と空き缶へと化かしていき、おれが作るつまみをうめえうめえと食べ散らかして、ご機嫌になった彼はうちのベースをブリブリと弾いていた。弾き手が変わるだけであんなにいい音が出るとは。
気分がよくなったおれたちは、夜中だというのにバンド仲間に突然電話をかけて始めた。遠くの街に引っ越してしまった人と、昔おれたちと3人でバンドを組んでた人。ふたりとも話をしたのは1年とか2年ぶりだ。
そりゃまあびっくりはされたけど、だらだらと話に付き合ってくれて、とくに何か会う約束をするでもなくバイバイした。というか、ふたりめの友達は寝落ち状態だった。
けどまあ、約束なんてのはもうどうでもいいんだ。お互い会いたいよねって気持ちが、ありったけ行き交うのを楽しめたから。あとはタイミングだけなのさ。まだ、その時じゃない。
***
久々に実家で酔っぱらった。
母の日も近いので、いつも宅急便で送ってたアレンジメントを持参していった。いつの間にか、家族に贈り物をするのに照れることもなくなった。一緒に用意した香り物のプレゼントは、ちょっと緊張したけどさ。もう何十年も、お化粧品を使ってる人に渡すんだもの。
父親と杯を重ねるうち、何かが終わってしまったことについて、どう評価するか…みたいな話になった。
「これでおしまいだ」って人間関係の破局や、不首尾な結果になってしまった物事について、それ単体で価値判断をするのは、なんだか早計なことじゃないだろうか。
成長の糧として失敗を見るという要素もあるんだけど、そもそも物事が終わりきることって本当にあるんだろうか。くすぶっていた物事が、後々になって息を吹き返し(もしかすると形を多少なりとも変化させて)、結果的には花を咲かせることがある。そういった経験を、どうやら父親は積み重ねてきて、どうにも無視できない要素になっているらしい。
物事を失敗と捉え切らず、あいまいなまま守っていくことは、白か黒かで決着をつけるのとは、違うストイックさがある。もしかすると、非合理的な道楽なのかもしれない。過ぎたことにとらわることで、足をすくわれたり、時間を浪費する場面だってある。
けれど、もはやしょうがない。これは選びようがない性分なのだ。じゃあ全部抱えて生きていくしかないよね。少なくとも、そんな生き方でケラケラと笑っている先輩が、目の前にいるおれの父親なんだ。
隣で母親が「あんたたちは、人の100倍は考え込むからねえ」って笑っていた。
***
JAPAN JAMとVIVA LA ROCKが無事に開催されているようで、ひとまずよかったなあと思っている。
おれはまだ我慢してようかなってことでチケットは取ってなかったんだけど、会場の写真がSNSで回ってきたり、公式サイトにあがってるステージの光景とかアーティストの姿を見ると、なんだかそれだけでうれしい気分になった。
けれども、やっぱりバッシングはあるわけで、特に開催地の地元の方が不安になっているというニュースにはもやもやした。そうだよなあ。自分の最寄り駅に全国から何万人も来たら、ただごとではないよなあ。
春フェスで一番好きな、宮城県で開催しているARABAKI ROCK FEST.も中止になってしまった。結局は高齢者も多く住む小さな町に、何千人も押し寄せてくるのが心配ということらしい。そう言われてしまったらなあ…。
という話になると、普段接する人の中にも「フェス素晴らしい!」「フェスやらないで!」という層に分かれてしまうのがかなしい。実際に、ついったーのタイムラインを流れていると、その辺が入り混じっているのを見かけることもある。
物事の考え方の違いは、「どうしてみんな分かってくれないんだ!」とか、「この人には言っても分からないから、離れよう」なんて分断になってくる。きっと、大切にしている物事ほどこうなるよね。
なんというか、自分自身のキャパの中身って、本当に人によって違う。たとえば、キャパが100あるとして、仕事50、生活20、趣味とか娯楽20、人間関係10という配分をする人がいるとする。そうなると、なにか人に対して思うことがあっても、仕事の1/5くらいしか腹を立てないのかなって。逆に、仕事上でこういう人の逆鱗に触れたら大変だ。死ぬ。
コロナのことも、観点も重さもまちまちだから、どうにもイラついたり腹の探り合いになっちゃうストレスが、なんともかんともしんどいよなって思う。たまには軽率に「み~んな同じだったらいいのに」なんて思っちゃう。それが一番おっかないけど。
そういえば、好きな人の捉え方も同じような話が出来る気がする。自分のあらゆる面で100%を占める人もいれば、人間関係というジャンルの中で一番好きなだけで、それが自分のすべてではないという人もいる。ってか、その方が多いか。
ただやっかいなのは、恋愛に全部引っ張られるタイプでなかった人も、相手によってはあれよあれよと沼に引きずり込まれてしまうことがある。
そして、後者の方が深く愛しているとも言い切れないのだ。
***
連休もあと半日で終わる。
なんだか真っ黒な雲が出て、風が強く吹いてきた。
むしろ、この世の終わりかも。