タメの効いたドラム
indigo la Endの佐藤栄太郎さん、椎名林檎や星野源に参加している河村カースケさん、聖飢魔Ⅱのライデン湯澤殿下、ZAZEN BOYSの柔道二段・松下敦さん…、自分が憧れるドラマーを思い浮かべると、だいたいこのあたりの面々がパッと思い浮かぶ。
いま挙げたドラマーに共通する要素として、タメの効いたどっしりとしたリズムが得意という点がある。テクニカルで流麗なフレーズより、ゆったりとしたリズムで歌や演奏を支えるプレイを聴かせてくれる。
自分もまた、そういったプレイが好きだ。ドラムを演奏するときは、かれらのような演奏をしたいと思っている。
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まだ自分がどんなドラムを叩きたいか分かってなかった頃、周囲に居たいろんなドラマーのことを観察していた。
ある人は圧倒的な手数で存在感を放ち、またある人は流れるような演奏で人々を魅了した。猛烈な強度を持った一音一音で場をいなす人がいれば、音色で主張せずとも演奏の流れを確実に導くような人もいた。誰もが、自分が演奏の場で強く思っていることが、そのままプレイスタイルに現れていた。
そんなふうに他のドラマーを分析しながら、いろんな場で自身の演奏を重ねるうち「あなたのドラムに乗せて演奏すると気分がいい」といった感想が、自分にとってうれしく感じられた。手数を増やす練習にはあまり興味が持てなかったけど、シンプルなフィルインを入れる場所とか、どの楽器のサスティンに合わせてハイハットを閉めるか、リズムをどれくらいタメるか…、バンドとして気持ちよくなるための探求心が、いつしかドラマーとしてのマインドの中心になった。
近年では自分の方を向いて演奏し、目が合うことを楽しんでくれる気質の人との演奏が増えてきた。お互いの調子を観察しながら、気持ちのいい瞬間を共有できた時の喜びったら、日常ではちょっと味わうことができない。
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手数を増やすには技術が必要で、手数を減らすには哲学が必要だ。
結局のところ、演奏者としての自分は、圧倒的な技術よりも、心地のよいリズムを刻み、ここぞという場所で流れを変えるような存在感に憧れているらしい。いつだって派手に演奏することも、または緩く脱力し続けることも求めてはいない。必要な力量を蓄え、それを適切なタイミングで表出させる哲学を、ドラムを続ける限り考えていたい。
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こういうの、なんか、人生とかにも応用できるのかな。