雁行

 陰陽座というバンドに所属する2人のギタリストが好きだ。

 

 叙情的なフレーズを得意とする招鬼、速弾きを得意とする狩姦。それぞれのプレイスタイルも魅力的なんだけど、とりわけ輝く場面と言えばふたりのツインリードにある。陰陽座の楽曲の間奏では、2人がそれぞれ得意なスタイルでギターソロを弾いたあと、2人が同じフレーズをハモる展開が多用されている。歪んだギターの音で奏でられる美しいハーモニーがたまらなく好きだ。

 

 2人の個性的なソリストが、まったく対照的なフレージングで楽曲を彩りつつ、楽曲が必要とするタイミングで重なりあう。そして、間奏が終わればまたそれぞれのパートに戻る。なんだか、あちこちの方向を向いて虫をついばむ鳥が、北へ南へ移動するときはビシッと隊列を組むさまを思い出す。そんな在り方に、なんだか音楽の領域に留まらず、憧れてしまう。

 

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 何かの目標に取り組むとき、そばで誰かが伴走するというのは、きっと心強いことだったんだろうなと振り返る。

 

 学生の頃、当時は当時なりに学校の勉強をひいひい言いながらやっていたけど、今思えば教室のみんなが同じ課題に取り組んでいるような状況って、結構心強かったりしたのかなと思う。同じタイミングで同じ宿題が出て、同じテストに恐れおののいて、同じ日に卒業を迎えた。

 

 群れのなかで、集団の動きに合わせて踏ん張りどころがやってくる。そんなスタートを切りつつも、1年1年と時間を重ねるうちに、自分のタイミングを見つけて群れから離れていく人が出る。そりゃあ、ひとりで頑張る方が力を発揮できる人もたくさんいるし、自分もどちらかと言えば集団は苦手だ。大学生になる頃には、ずいぶんと自分の裁量で出来ることが増えて、そんな自由さが心地よかった。

 

 けれど、「ああ、ここからは自分のタイミングで踏ん張らないといけないんだな」という気づきは、少しだけおれのことを不安にさせた。学校に来ることをやめた友達や、自分と違う進路を選んだ友達、そしてひとりでやりたい進路を選んだ自分自身を目の当たりにするたび、いつまでも群れに属することはないんだなと悟る。

 

 おれは群れからはずれても、ちゃんと頑張れたんだろうか?

 

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 社会に出てからのおれにとって、何かを頑張るというのはすっかり個人的な行いになった。仕事でも、趣味や生活でも、だいたいが1人でうんうんと頭を悩ませることが多くなって、どんなふうにモチベーションを維持するとか、自分を鼓舞するかとか、そういう方法はひと通り分かってきたつもりだ。

 

 だからこそ、たまに誰かと一緒に物事に取り組めることを、とても貴重に思うのだ。それまでどこか別々の場所で孤軍奮闘していた同士が、群れを組んでどこか遠くへ飛んでいける。そんな瞬間がめぐってくる喜びは、ちょっと代えがたいものである。

 

 今度はどんな目標について、徒党を組むことがあるのだろう。

 誰かと群れる瞬間を思いながら、力を蓄えて生きていく。